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闇の箱

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□ 『研修』 □

『研修』 01 ペーパーテスト

――――『不思議の国のアリス』は、イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(筆名は[A])によって記された。彼はその作風や蒐集品から少女性愛者であるという説が根強い。12歳の少女に一目惚れして、その母親に偽装結婚を申込みながら娘を求め続ける男の物語である『[B]』を書いたウラジミール・ナボコフは、ドジソンのことをその主人公になぞらえて呼んでいたという。

“アリスなら、ルイス・キャロルね。ナボコフのロリータね。12歳、12歳で彼女は、そんなに魅力的だったのかしら…”


――――『[A]』は、芥川龍之介が『宇治拾遺物語』の説話をアレンジして1918年に書いた作品。絵仏師良秀は、[A]の屏風絵のモデルとして娘を使う。その過程で娘は[B]死し、良秀自身も絵を描き終えて縊死してしまう。

“屏風絵だから…『地獄変』。火あぶり地獄の為にモデルにされたんだから…焼死ね。親の仕事のために、この娘は黙って焼かれることを選んだのかしら…。私なら…私も…”


――――古代ギリシアの哲学者のひとり。母親が[A]階級であり、自分自身もローマ帝国に[A]として売られ、その主人の下で哲学を学んだ。彼が属する後期ストア派は、[B]を肯定し、受け入れる覚悟が必要であると説く。

“えっと、哲学…エピクテトスかしら…。Aは奴隷…、後期ストア派ならBは運命…と。………奴隷…運命…”

 あかねは、テスト用紙に向かってペンを走らせていた。自分の運命を決める試験に必死に取り組みながらも、設問文のひとつひとつを読むたびに、自分の身と引き比べて考えることを止められなかった。





『研修』





「ほう、あの問題を正解するか」
 ワイングラスを傾けながら、ひとりの男は感心したような口ぶりで言った。
「この娘、いくつでしたっけ」
 別の男が、手元の資料を確認する。
「ええと、瀬戸あかね。16歳ですね。高校に入ったばかりです」
「高校といっても、××女学院だろう。あそこは幼稚舎から一貫だから」
「これくらいは、出来て当然か」
「明治の世から、教養深く慎み深い箱入り娘を出荷しておるところですからな」
「出荷ですか。言い得て妙ですな」
 また別の男が、揶揄して言う。
「おっと、気をつけないと。実はうちのも××の出身でして」
「ほう。なら奥方にとっては後輩にあたる訳ですな」
「ええ。未だに、同窓会だのなんだのと出かけていきますよ」
「じゃあ、この制服を見ていると、若い頃の奥様を思い出すんじゃないですか」
 あかねの姿が映し出されたモニタを指して言う。あかねは高校の制服を着て、試験に臨んでいた。
「そうですねえ。まあ、あんなに派手な下着を履いてはいませんでしたが」
 男は口元の髭に手をやりながら、にやりとした笑みを浮かべて言った。
「ははは。なるほど」
 別の男が、モニタのひとつに目を向ける。そこには、机に向かうあかねの下半身が映し出されていた。膝から太股、短いスカートの奥には、ちらちらと純白の下着がのぞいていた。
 
 男達のいる部屋の壁には、いくつものモニタが壁一面に据え付けられていた。その多くに、あかねが試験を受けている様子が映し出されていた。 
 あかねが試験を受けている部屋は、学習塾の教室のような設えをしていたが、無数のカメラが設置されていた。あかねの机や教卓の片隅に隠され、天井や壁に埋め込まれたカメラは、四方八方からあかねの姿を狙い、男達の待つ別室へとその姿を届けていた。
 真剣に考え込むあかねの表情、唇を引き締めるあかねの横顔。ペンを走らせる指先、記される筆跡。脇を締めてペンを握るために、意図せず強調される豊かな胸。丸めた背中、襟足とセーラー服のスカーフの間のうなじ。そしてスカートの中の派手なレースの下着までも、あかねは男達の目に晒していたのだった。

 もちろん、由緒ある××女学院の制服が、下着が見えるほどのスカート丈であるなどということは、有り得ないことである。あかねはテレビなどで、スカート丈を短く改造する同年代の女の子のことを知ってはいたが、厳しい校則や、なによりも16年間育まれてきた恥じらいの観念から、自分でそれをしてみようとは思ってもみなかった。今、あかねが身につけているのは、あかねの制服とは似て非なるものであった。
 
 
 あかねは、昨晩この施設に入る際に、持ってきた制服をクリーニングサービスに預けた。しかし朝になって、手違いでクリーニングが終わっていないことを知らされ、この制服を着用するようにと届けられたのである。それは確かに、××女学院の高等部の夏服だった。しかし、そのスカート丈は、あかねのものの半分以下まで詰められていた。
 朝のシャワーを済ませたあかねの脱衣所には、その改造された制服の上下、そして下着とソックスが用意されていた。いかにも上質のシルクであることがわかる純白のブラジャーとショーツ、そしてスリップがひと揃い置かれていた。

“これ、私が履いていいのかしら…。でもこんなの履いたら…”
 あかねは下着を手にとって戸惑った。その下着は、あかねがいつも身に付けているものよりも遙かに上質の肌触りと、明らかに派手なデザインのものであった。精緻なレースの刺繍は可愛かった。しかし、女子学生の身に付けるものではなく、男性の視線を受けるものであることは明らかであったからだ。だが他に見当たるものもなく、あかねはおそるおそるそれを身に付けた。
 実際にひと揃いを身に付け、姿見に自分の格好を映し出してみて、あかねは思いがけず心が躍った。大人びた下着を身につけた自分の肢体が、思ったほど悪くない。いやむしろ似合うと思えたからである。実際、瑞々しい若さをたたえたあかねの躯に、それはよく似合っていた。肌に吸い付くようにしっとりと包み込むブラジャーのおかげで、歳の割には豊かな胸が、一層形良く大きく見えた。
“うん。これは、なかなか”
 制服まで身につけ、姿見で身だしなみをチェックしたあかねは、満足げに微笑んだ。しかし
「あ。やだ…」
 誰もいない脱衣所で、思わず声を上げ、あかねは顔を赤らめた。夏服の薄い生地の上からも、その形良く突き出した胸と、スリップの刺繍がくっきりと浮かび上がっていたからだった。それに加えて、薄い生地の夏服のプリーツスカートは、身動きする時の少しの風でも煽られ、下着が見えてしまいそうだった。
「こんなに短いなんて…」
 実際に履いてみると、思っていた以上にスカートは短かった。膝上何cmくらいだろうか。私服でもっているスカートよりも遙かに短いスカートに、あかねはプリーツを押さえる手を離せなかった。

 もちろん、その着衣の様子や、朝のシャワーシーンも、あかねの姿は余すところなくカメラによって撮影されていた。その録画映像は、試験を受ける姿を中継しているモニタ群とは少し離れたところで、先ほどからエンドレスで流れていた。シャワーを浴びて上気する一糸纏わぬあかねの肢体と、テスト用紙に向かう真剣な表情を見比べて、好色な笑みが押さえきれない男もいた。


「さて、そろそろ今日の競売が始まりますな」
「そうですね、会場に移りましょうか」
 男達が杯を置いた。それを合図に、男達の前に跪いて奉仕をしていた女たちが、一斉に唇や手を離した。手早く男達の肉棒を清め、ズボンの中に収めて差し上げなくてはならない。ソファに深々と腰掛けた男達は、準備が整うと、女たちの頭を撫で、首輪を牽いて立ち上がった。
 女たちは、全裸であったり、服を身につけていたりとさまざまな姿をしていた。縄化粧を施された者も、男の装束と釣り合うほどに上等なドレスを身につけた者もいた。四つんばいになって側に控える者もいれば、男の腕を取って貴婦人のように振る舞う者もいた。さまざまな姿をした女たちであったが、その首には一様に、黒い首輪を着けていた。首輪から伸びる鎖の端は男に握られ、その男の所有物であることを示していた。

 女たちは、男達の奴隷であった。かつては、自由な女性であったが、様々な経緯を経て、今や牝と呼ばれ、男達に奉仕する存在と成り果てていた。どれほど豪華なドレスを着ていても、それは主人である男の趣向でしかなかった。
 男達は、この場の常連であった。女たちの多くは、画面に映るあかねのように、品定めをされた後、競売に掛けられて、今の主人に買われてきていた。
 かつて自分が奴隷として売り買いされた場所に、買い手である主人に伴われて来た女たちは、複雑な心境であった。自分もこうして見られていたのかと思い、今更ながら顔が赤くなった。まるで過去の自分のようで、あかねの姿など見るに堪えなかった。試験に打ち込むあかねの真剣な顔も、派手な下着を恥じらう顔も、そして未だ男を知らない無垢な肢体も、主人に奉仕することに慣れた女たちには眩しすぎた。いっそ早く奴隷になってしまえと。この過酷な運命を享受する仲間になれば、優しくもできるものをと、嫉妬混じりの複雑な思いを抱く女もいた。

「しかし、2週間後が楽しみですなあ」
「ええ。幾らになるでしょうね。あかねちゃんは」
「事前評価でAAAなんて、めったにないですからねえ」
「しかもまっさらな処女だと言うじゃありませんか。もう堪りませんな」
「この後の試験で、評価を落とさなければいいですが」
「なに、ちょっとくらい落ちても、可愛げというものですよ」
「いっそ今日買っていってしまいたいですねえ」
「ちょっと、抜け駆けはいけませんぞ」

 男達と牝奴隷たちが部屋を出て行き、見る者がいなくなっても、モニタはあかねの試験の模様を克明に写し出していた。試験の時間は、まだ半分近く残っていた。その試験が何を意味するものか知らずに、あかねは懸命に試験に取り組んでいた。

 あかねが競売に掛けられるのは、2週間後の予定である。




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Date:2009/06/16
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Thema:官能小説
Janre:アダルト

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