「はい、それでは商品番号39807542-Uは、無事落札されました。おめでとうございます」
(終わった…やった…)
競りの終了を告げる槌音を、自分の荒い息と心臓の音とバイブの振動のなかに聞いて、みくは安心して、意識を手放しそうになった。。
中古商品の性能テストということで、場内の客からのリクエストを元に、ステージの上で徹底的に責められたのである。最後には、限界ギリギリの太さのバイブを前と後ろの穴に入れられ、クリトリスにローターを付けられたまま、両手と口を使って、希望者の肉棒に奉仕することとなった。いわゆる味見である。十数人の精液が体中に降りかかってアピールタイムは終わったが、みくは気を失いかけていた。
だが、みくに倒れている時間などあるわけない。買われた奴隷は、速やかに身支度をして、新しいご主人様の元に赴かなければならないからである。自力では立てなかったみくは、その場でバイブを抜かれ、スタッフに両脇を抱えられて、舞台袖に退場した。
(誰が、わたしを買ってくれたんだろう…)
「ヤナギ様、お待たせを致しました。先ほどの商品でございます」
みくは、裸に薄い手袋だけをして、スタッフにリードを牽かれて、四つん這いで新しい主人様の元に連れて行かれた。
「ああ、ありがとう」
テーブルの方に向いていたヤナギは、椅子を回して通路側、みくの方に向き直り、スタッフからリードを受け取った。
「私が、キミの新しい主人だ。よろしくね」
ヤナギは、真っ白になった髪を後ろに撫でつけた初老の男だった。前の主人に連れられていったパーティーなどで会ったことがあるかと考えたが、みくには覚えがなかった。
「はじめまして、ヤナギ様。この度は、わたくしのようなモノをお買い上げくださいまして、誠にありがとうございます。精一杯ご奉仕させていただきます。よろしくお願い致します、ご主人様」
みくは、三つ指をついて深々と床でお辞儀をして、頭を上げて笑った。
「うん。名前はなんと言うんだね」
「ご主人様の、お好きなようにお呼び下さい」
とても快活な声で、そう言った。
「うーん。今までは、なんと呼ばれていたんだい」
「今まで…」
一瞬、みくは言い淀んだが、すぐに言葉を繋いだ
「今までは、カコと呼ばれておりました。ですが、その名前の子はもうおりません」
「ほう。どうして?」
「カコはもういなくなりました。わたしはご主人様だけにお仕えする名もない奴隷です。どうぞ、ご主人様のお好きなようにお呼び下さい」
「そうか。では名前をくれてやろう」
「ありがとうございます」
みくはもう一度お辞儀をした。
「そうだな…。ん…では、ユウコというのはどうだろう。私が若い頃に好きだった女優の名前だが」
みくは一瞬、躯を硬くした。けれども、
「…はい。素敵な名前をくださって、ありがとうございます。私は、ユウコです」
けれども、すぐにみくは顔を上げて、主人の目を見て笑った。
「よしよし。じゃあユウコ、とりあえずさっきの続きをしてもらおうか」
ヤナギは笑みを浮かべると、みくのリードを引っ張った。
「はい。先ほどはお見苦しいところをお見せいたしました。ご奉仕させていただきます」
みくは、再び深々とお辞儀をすると、主人の足下まで這ってきて、手袋を脱いだ。床で汚れた手で、主人の身体に触るなどもってのほかだからである。
素手でヤナギのズボンのチャックを降ろし、半立ちのペニスを取り出した。チャックが当たらないように手で気をつけながら、みくはそのペニスをいきなり口に含んだ。
「ん…むふっ…んっ…」
口の中で唾を溜めながらしばらく舐めていると、ヤナギのペニスは次第に硬度を増して、かたちがはっきりしてきた。
「おお…やはり、うまいな…おまえは」
「…んっ…ぷあ…。ありがとうございます。あの…ご主人様…」
「なんだ…?」
「先ほどステージの上で、一番最初にわたしの口の味を見てくださいましたか?」
「え…ああ、そうだ。覚えていたのか」
「はい…。大勢の方に試していただきましたが、ご主人様のことはなぜか印象に残っておりました」
みくはヤナギの顔はよく覚えていなかった。けれども口の中に突き込まれたペニスの硬さと曲がり具合はしっかりと覚えていた。特に印象に残っていたわけではなかったが、思い出すことは出来た。この6年で出来るようになったのだ。
「可愛いことを言う。さあ、続けて」
「はい…。…ん…ぶふっ…じゅる…じゅる…」
「んん…いいぞ…ユウコ」
ヤナギの手が、みくの頭を撫でた。みくは、ヤナギのかさかさした手の温もりを、愛しく思った。それは前の主人の手とはあまりにも違っていたが、じきに慣れることだろう。ペニスの硬さも、手の感触も、ユウコと呼ばれることも、慣れてしまえるだろう。ヤナギをご主人様と呼ぶことに、たちまち慣れてしまったように。
みくは、口の奥まで肉棒を咥え込みながら、主人の顔を見て、目元で微笑んだ。
ユーズド(了)
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