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闇の箱

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□ 『研修』 □

『研修』 08 リペア(1)

 二月ほど前のことである。

『誰か! 誰かいないの?! 助けて!』
 少女が叫んでいる。
『助けて! こんな真似して只で済むと思ってるの! 離して! 外しなさい!』
 少女は叫びながら、必死で手足を動かしている。しかし自由にはならない。手にも足にも鉄の枷を填められて、鎖で壁に繋がれていたからだ。
『許さないから! 早くこれをほどきなさい! 誰か! お父様! お父様助けて!』
 少女は、目を覚ましてからずっと、この調子で叫び続けている。
『お父様! おと…』
 いささか面倒になってきたので、男はスピーカーのスイッチを落とした。男にとってはマジックミラーの向こう側の出来事であった。少女の声はそれで聞こえなくなった。女に悲鳴をあげさせるのが男の仕事であるし、仕事を離れてもそれは嫌いではない。けれども、自分が何かしたのではなくて、少女が勝手に叫んでいるだけの声には、特に興味はなかった。金切り声というのだろう。耳障りなだけだった。
『……! ……!』
 窓越しに見える少女はまだ叫んでいたが、男は意に介さなかった。コーヒーメーカーからコーヒーを注いで飲みながら、少女の資料を手に取った。

 数時間後。少女は気絶する寸前だった。
 少女は声が嗄れるまで叫び続け、ときに咽せた。両手足は余裕なく拘束されて壁に括られていたから、身体をくの字に折ることも、胸を庇うこともできなかった。頭だけが俯くと、喉が圧迫され、かえって咳がひどくなった。呼吸をすることは重労働だった。喉が痛くなるまで叫ぶことも、咳き込むことも、少女の体力を奪っていった。咳をすれば頭に響く。自ら生む咳の衝撃に、少女の思考は途切れ途切れになっていった。
 俯いてしまう頭をわずかに立て直し、喉を開けて喘いだ。咳がおさまり、呼吸が整う。徐々に身体の火照りが静まると、噴き出た汗で一気に身体が冷えた。少女は裸だった。一糸纏わぬ細い躯でもって、大の字を描かされていた。それは、見る者が見ればうってつけだと楽しんだかもしれなかった。少女の身体は火照りと羞恥で真っ赤だったし、その苛烈な気性はまさに火のようだったからだ。
 しかし、その炎にも限界が近づいていた。咳は体力を消耗させ、汗は体温を奪った。気力を支える体力の方が失われていった。少女はもはや叫ぶことを止めた。少女の意識を支えていたのは、屈辱への怒りと羞恥、そして
(お…おしっこ…もう…いや…だめ…だめ…)
 そして尿意だった。
 少女自身は知るよしもなかったが、少女がここに縛り付けられる前、最後に手洗いに立った時から十時間が経過していた。覚醒していなかった時間を除いても、自然に呼ばれるには充分な時間である。くわえて、身体は汗で冷え切っていた。少女の身体は当然の権利として、生理的欲求を満たすよう彼女に囁いていたが、彼女は頑なに拒んだ。
 自分をこのような状況にした者がいる。部屋の右手にある扉から、そいつが今にも入ってくるかもしれない。放尿しているところを見られるなど、裸以上の屈辱だった。もしかすると、今も見られているのかもしれない。あの真正面の壁に張られている大きな姿見など、いかにも怪しい。マジックミラーではないだろうか。裸で壁に括り付けた自分を、あの向こうで観察しているのではないか。そう思い、少女は鏡を睨み付けた。しかし、いくら睨んでも、彼女の目に映るのは、裸で昆虫の標本のように壁に留められている自分の姿だけだった。化粧が落ちてぐちゃぐちゃになった裸の女が睨み返してくるのに堪えきれず、少女は顔を伏せた。
(あ…も…もう、もう…)
 少女の身体は、尿意を押しとどめるようには何一つ動かせなかった。両手は頭の上に留められていたから、手でもって尿道に蓋をするようなことはできなかった。両足は肩幅よりも広く開かされていて、太股を閉じて膀胱の筋肉を引き締めることもできなかった。それどころか、長時間立たされ続けた両脚は疲労し、引き攣れて痺れていた。両手が括られ吊されていなければ、立っていることも難しかっただろう。少女の顔は羞恥と我慢とで真っ赤に染まり、身体の震えは止まらずにいた。
(だめ…もう…もれちゃう…いや…だめ…)
 少女の生理的欲求を押し止めているのは、羞恥心だけだった。誇りと言ってもいいだろう。しかし、それも限界に達しようとしていた。
(だめ…だめ…! でも、もう…したい。する…)
 少女はいよいよ堪えきれず、自分を許そうとした。楽になりたかった。その時、
ガチャ
「よぉ、目ぇ覚めたか」




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Date:2010/05/02
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Thema:官能小説
Janre:アダルト

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