2ntブログ
+

闇の箱

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 『研修』 □

『研修』 08 リペア(19)

 少女が泣きやむと、男はもう一度だけ頭を強く撫でて髪をくしゃくしゃにして、手を離した。
「よし。少し早いが昼メシにするぞ」
「ぐすっ…。はい」
「今日は何にするかな…久しぶりにオムライスでも食べるか」
「え、はいっ」
 少女の声が弾んだ。オムライスは、少女の好物だった。
 ここでは調教師と奴隷は、三度の食事をともにして、同じものを食べることになっていた。もちろん、飢えを体験させて服従を強いる絶食メニューや、あえて残飯のような餌を与えて屈辱に慣らす訓練もあった。しかし、基本的には同じものを三度三度食べることになっていた。少女が疲労困憊して休養が与えられた日には、少女に合わせて男もお粥を食べていたくらいである。トッピングは、男のほうが少し豪華だったけれども。

 食事の時間も、研修の重要な一環であった。差し向かいで食事をすることで、奴隷はより従順になるのである。
 人間は、ひとりでものを食べられない生き物である。古来から火を焚いた周りで集団で煮炊きをしてきた記憶があるからか、孤独に食事をすることに耐えられない。もちろん仕事や一人暮らしなどで孤食をする人間は多いが、テレビを付けていたり、携帯電話を操作していたりする。一方的に人の声や顔を見たり、一方的にメールを打つようなことで気を紛らわせている。とにかく人の存在を感じていなければ、寂しくて食事にならないのである。その顕著な例として、食事をする場面だけを撮った映像ソフトというものさえあるという。その画面を見ていると、まるで差し向かいで食事をしているような気分になれるそうだ。画面の中から時々、美味しいねと微笑んでくれるだけでなにか慰められるものがあるというのだから、これは人間という社会的動物の習性ともいえるだろう。その習性を利用して、奴隷の精神の安定させ、依存度を高める措置なのである。

 そもそもこの制度ができたのは、ある奴隷からの望みがきっかけであった。二十年ほど前の競売の前夜、当時の調教師が戯れに、最後に望みはないかと奴隷に尋ねた。すると、夕飯を一緒に食べたいという願いが出たのだった。それまでは、独房の囚人のように、ドアの隙間から食事を差し入れ、終わったら下膳させるようなかたちであった。ちなみに献立自体は、昔も今も変わっておらず、外科病棟の病人食よりもマシという程度の普通の食事である。いかにペット扱いの奴隷とはいえ、本当にペットフードを食べさせるわけにもいかない。必要な栄養素が足らずに痩せてしまったり、健康を害してしまっては商品価値が落ちるからである。
 些細なことだし、最後であるからとその調教師は願いを叶えた。すると、その奴隷があまりにも嬉しそうな顔をしたのだという。当たり前だがそれまで、自分にそんな顔を見せたことがなかった。作り笑顔ではない心からの微笑みを見たことがなかった調教師は、驚き訝しんだ。自分と食べても嬉しくないだろうと。すると奴隷は、そんなことはない。誰かと食べられるだけで嬉しいと言ったのだという。たとえそれが、今までさんざん自分を虐め抜いた者であっても。調教師は面白がって、その次の日の朝と昼も食事を共にした。奴隷は喜び、競売の舞台に立つための準備を気分良く行い、最後には調教師に礼を言いさえしたという。このことから、食事を共にすることの有効性が議論されるようになった。それまでは、あくまでも奴隷は商品であり、調教師は責めて鍛えればいいというような考え方が大勢だった。モノに気を遣うことはない。どうせ買われていった先でどんな扱いを受けるか解らないのだから、優しくしても仕方ないということである。その考え方に一石を投じたのが、この共食の制度であった。
 考えてみれば当たり前のことである。調教というのも、換言すれば教師と生徒の個人授業のようなものであり、信頼に基づいての意思疎通が大事なのである。コミュニケーションをとる為に食卓を囲むというのは、社会のあちこちで行われている。宴席しかり、デートのディナーしかりである。とはいえ、贅沢な料理を食べさせ、文字通り餌で釣るようなことをしても、経費ばかりかかって意味はない。けれども、食事をともにするだけならと、段階的に実施されるようになったのである。
 その効果はじきに現れた。食事をともにした奴隷は、しなかった場合よりも従順になり、進んで奉仕をするようになったのである。まず、調教師が直接、食事を運んでくるということが、奴隷の心理に影響を与えた。なんといっても、命綱である食料の与奪権を誰がもっているかが明確になったことが大きい。うまく奉仕ができなかったりして機嫌を損ねたら、食べさせてもらえないかもしれないという怖れから、奴隷はより従順になった。また、食事の進み具合から、体調の管理や精神の状態をより正確に推し量れるようになり、きめ細かい調教ペースの調節やケアが可能になったという。
 そして、餌をもたらす親鳥に雛がなつくように、親子関係のような慕わしげな素振りをみせるようになった奴隷もいた。同じものを食べるということ自体が、そういった親近感を芽生えさせるのだった。箸の使い方や食べる順序や好き嫌いなど、食べ物の好みや食べ方には人間性が表れる。それは、何を話すわけでもなくとも雄弁に人間性を語り、共感を呼ぶのだった。もちろん、すべての奴隷がそこまで言語化された洞察力があるわけではないが、それでもなんとなくわかるものはあるのだろう。食事をともにするようになってから、奴隷が素直になったという意見が調教師の側からも多数寄せられ、共食は有効だということになったのだった。
 実際、少女と男の場合でもそうだった。少女につきあって男がお粥を食べた時、少女はなんだか申し訳ないような気になった。そして、なんだか嬉しい気になってしまった。男は黙って食べていただけで、気遣うような素振りさえ見せることはなかったのだが、そこに少女は温かいものを勝手に見いだした。そう男に話しでも、一笑に付されるだけだろうけれども。

 そして少女は今も、胸が温かくなったような思いだった。男に言葉をかけてもらって、頭を撫でてもらって、お昼ご飯はオムライスだという。先ほどまでの見知らぬ若い男とのセックスは辛かったが、それを補って余りある感じがした。だから、男に次のように言われても、ちょっと悲しくはなったが平気だった。
「ああ、おまえは今日は犬だからな。もちろんそのまま食えよ。床に皿を置いてやるから、匙も箸も使うなよ」
「は…はい」
 朝、犬のように廊下を連れ回されてここに来たときから、予想していたことだった。
「じゃあ行くか。首出せ」
 少女が天井を向いて首を差し出すと、男は朝のようにそこに綱を付けた。少女を回転させて、両手足も朝と同じように鎖を掛けた。
「先にシャワーを浴びて、それからメシだな。面倒だから直接、食堂に行くぞ」
「はい…」
 部屋から出たことのなかった少女は、食堂なんてものがあることもはじめて知ったが、そういうことなのだろうと思った。

 男は椅子から立ち上がって、綱を牽いて歩き出した。少女と男がいたスペースは、小学校の音楽室のような大部屋の真ん中あたりだったので、出口まではだいぶあった。そこかしこに、調教を受けている奴隷の姿があった。自分も調教を受けていた時には忘れていたが、お先に失礼という今になると、喘ぎ声や叫び声が絶えることはなく、淫卑な熱気に満ちていたことに気づいた。一刻も早く立ち去りたかったし、一人だけ先に終わったのがいたたまれないような気もした。尤も皆、自分のことだけで手一杯で、新入りがどうしていようが、かまうほどの余裕はなかったのだが。
 部屋を出る間際に、男は再び口を開いた。
「昼メシを食ったら、午後は礼儀作法だ。おまえの育ちなら必要ないかもしれんから、まあ休憩がてらな。そんで夕メシも早めに食って、夜はレクに出す」
 レクとは、自由参加の乱交のことである。手が空いていて欲求不満な調教師と、大人数に輪姦される研修が必要な奴隷が集まって、ひたすら乱交をするのだ。その意味は少女にはわからなかったが、次の言葉でなんとなく解った。
「おまえはまだあんまり使ってもらってねえからな。レクでたくさんのちんぽに可愛がってもらえ」
「は、い…」
「さっきのヤツみたいに溜まってるやつらばかりだからな。どんどん精子を搾り取ってやれ」
「はい…」
「たくさんちんぽがいて、味もかたちも匂いも違うからな。楽しいぞ」
 楽しい、のだろうか。いや、きっと楽しいのだろう。まだ3本しか知らない少女であったが、それでも随分違うのはわかったから。
「ここを出る時までに、どのちんぽが誰のなのか、目を瞑って咥えただけでも見分けられるくらいにしてやるからな」
「そんな…こと…」
「できなきゃいけねえんだ。できるようにしてやるから、気張れ」
 これから先の少女の生は、それが出来るようになることで切り開かれるのだから。

 もちろん、気心が知れるというのは、お互い様のことである。調教師も人間であるから、馴れ合いに発展する可能性がないわけではない。けれども、過酷な研修に手心を加えるような調教師がいるはずはなかった。手を抜いた調教をして、奴隷としてのレベルが低いまま出荷することになってしまっては、一番困るのはその可愛がった奴隷自身である。売れ残ったり返品されてしまえば、どうしてやることもできない。だから、気心が知れて情が生まれた奴隷にこそ、厳しい調教を施してやる。手塩にかけて鍛えて、より高価く買ってもらえるように仕上げることこそ、調教師なりの情のあり方であった。

「はい」
 少女は、男の言葉に応えて、少しはっきりと返事をした。




リペア(了)
* BACK

* 「『研修』」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2010/11/23
Trackback:1
Comment:0
Thema:官能小説
Janre:アダルト

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

* まとめteみた.【『研修』 08 リペア(19) 】

 少女が泣きやむと、男はもう一度だけ頭を強く撫でて髪をくしゃくしゃにして、手を離した。「よし。少し早いが昼メシにするぞ」「ぐすっ…。はい」「今日は何にするかな…久しぶりにオムライスでも食べるか」「え、はいっ」 少女の声が弾んだ。オムライスは、少女の好物...
2012/04/05 【まとめwoネタ速suru

+