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『研修』 08 リペア(19)

 少女が泣きやむと、男はもう一度だけ頭を強く撫でて髪をくしゃくしゃにして、手を離した。
「よし。少し早いが昼メシにするぞ」
「ぐすっ…。はい」
「今日は何にするかな…久しぶりにオムライスでも食べるか」
「え、はいっ」
 少女の声が弾んだ。オムライスは、少女の好物だった。
 ここでは調教師と奴隷は、三度の食事をともにして、同じものを食べることになっていた。もちろん、飢えを体験させて服従を強いる絶食メニューや、あえて残飯のような餌を与えて屈辱に慣らす訓練もあった。しかし、基本的には同じものを三度三度食べることになっていた。少女が疲労困憊して休養が与えられた日には、少女に合わせて男もお粥を食べていたくらいである。トッピングは、男のほうが少し豪華だったけれども。

 食事の時間も、研修の重要な一環であった。差し向かいで食事をすることで、奴隷はより従順になるのである。
 人間は、ひとりでものを食べられない生き物である。古来から火を焚いた周りで集団で煮炊きをしてきた記憶があるからか、孤独に食事をすることに耐えられない。もちろん仕事や一人暮らしなどで孤食をする人間は多いが、テレビを付けていたり、携帯電話を操作していたりする。一方的に人の声や顔を見たり、一方的にメールを打つようなことで気を紛らわせている。とにかく人の存在を感じていなければ、寂しくて食事にならないのである。その顕著な例として、食事をする場面だけを撮った映像ソフトというものさえあるという。その画面を見ていると、まるで差し向かいで食事をしているような気分になれるそうだ。画面の中から時々、美味しいねと微笑んでくれるだけでなにか慰められるものがあるというのだから、これは人間という社会的動物の習性ともいえるだろう。その習性を利用して、奴隷の精神の安定させ、依存度を高める措置なのである。

 そもそもこの制度ができたのは、ある奴隷からの望みがきっかけであった。二十年ほど前の競売の前夜、当時の調教師が戯れに、最後に望みはないかと奴隷に尋ねた。すると、夕飯を一緒に食べたいという願いが出たのだった。それまでは、独房の囚人のように、ドアの隙間から食事を差し入れ、終わったら下膳させるようなかたちであった。ちなみに献立自体は、昔も今も変わっておらず、外科病棟の病人食よりもマシという程度の普通の食事である。いかにペット扱いの奴隷とはいえ、本当にペットフードを食べさせるわけにもいかない。必要な栄養素が足らずに痩せてしまったり、健康を害してしまっては商品価値が落ちるからである。
 些細なことだし、最後であるからとその調教師は願いを叶えた。すると、その奴隷があまりにも嬉しそうな顔をしたのだという。当たり前だがそれまで、自分にそんな顔を見せたことがなかった。作り笑顔ではない心からの微笑みを見たことがなかった調教師は、驚き訝しんだ。自分と食べても嬉しくないだろうと。すると奴隷は、そんなことはない。誰かと食べられるだけで嬉しいと言ったのだという。たとえそれが、今までさんざん自分を虐め抜いた者であっても。調教師は面白がって、その次の日の朝と昼も食事を共にした。奴隷は喜び、競売の舞台に立つための準備を気分良く行い、最後には調教師に礼を言いさえしたという。このことから、食事を共にすることの有効性が議論されるようになった。それまでは、あくまでも奴隷は商品であり、調教師は責めて鍛えればいいというような考え方が大勢だった。モノに気を遣うことはない。どうせ買われていった先でどんな扱いを受けるか解らないのだから、優しくしても仕方ないということである。その考え方に一石を投じたのが、この共食の制度であった。
 考えてみれば当たり前のことである。調教というのも、換言すれば教師と生徒の個人授業のようなものであり、信頼に基づいての意思疎通が大事なのである。コミュニケーションをとる為に食卓を囲むというのは、社会のあちこちで行われている。宴席しかり、デートのディナーしかりである。とはいえ、贅沢な料理を食べさせ、文字通り餌で釣るようなことをしても、経費ばかりかかって意味はない。けれども、食事をともにするだけならと、段階的に実施されるようになったのである。
 その効果はじきに現れた。食事をともにした奴隷は、しなかった場合よりも従順になり、進んで奉仕をするようになったのである。まず、調教師が直接、食事を運んでくるということが、奴隷の心理に影響を与えた。なんといっても、命綱である食料の与奪権を誰がもっているかが明確になったことが大きい。うまく奉仕ができなかったりして機嫌を損ねたら、食べさせてもらえないかもしれないという怖れから、奴隷はより従順になった。また、食事の進み具合から、体調の管理や精神の状態をより正確に推し量れるようになり、きめ細かい調教ペースの調節やケアが可能になったという。
 そして、餌をもたらす親鳥に雛がなつくように、親子関係のような慕わしげな素振りをみせるようになった奴隷もいた。同じものを食べるということ自体が、そういった親近感を芽生えさせるのだった。箸の使い方や食べる順序や好き嫌いなど、食べ物の好みや食べ方には人間性が表れる。それは、何を話すわけでもなくとも雄弁に人間性を語り、共感を呼ぶのだった。もちろん、すべての奴隷がそこまで言語化された洞察力があるわけではないが、それでもなんとなくわかるものはあるのだろう。食事をともにするようになってから、奴隷が素直になったという意見が調教師の側からも多数寄せられ、共食は有効だということになったのだった。
 実際、少女と男の場合でもそうだった。少女につきあって男がお粥を食べた時、少女はなんだか申し訳ないような気になった。そして、なんだか嬉しい気になってしまった。男は黙って食べていただけで、気遣うような素振りさえ見せることはなかったのだが、そこに少女は温かいものを勝手に見いだした。そう男に話しでも、一笑に付されるだけだろうけれども。

 そして少女は今も、胸が温かくなったような思いだった。男に言葉をかけてもらって、頭を撫でてもらって、お昼ご飯はオムライスだという。先ほどまでの見知らぬ若い男とのセックスは辛かったが、それを補って余りある感じがした。だから、男に次のように言われても、ちょっと悲しくはなったが平気だった。
「ああ、おまえは今日は犬だからな。もちろんそのまま食えよ。床に皿を置いてやるから、匙も箸も使うなよ」
「は…はい」
 朝、犬のように廊下を連れ回されてここに来たときから、予想していたことだった。
「じゃあ行くか。首出せ」
 少女が天井を向いて首を差し出すと、男は朝のようにそこに綱を付けた。少女を回転させて、両手足も朝と同じように鎖を掛けた。
「先にシャワーを浴びて、それからメシだな。面倒だから直接、食堂に行くぞ」
「はい…」
 部屋から出たことのなかった少女は、食堂なんてものがあることもはじめて知ったが、そういうことなのだろうと思った。

 男は椅子から立ち上がって、綱を牽いて歩き出した。少女と男がいたスペースは、小学校の音楽室のような大部屋の真ん中あたりだったので、出口まではだいぶあった。そこかしこに、調教を受けている奴隷の姿があった。自分も調教を受けていた時には忘れていたが、お先に失礼という今になると、喘ぎ声や叫び声が絶えることはなく、淫卑な熱気に満ちていたことに気づいた。一刻も早く立ち去りたかったし、一人だけ先に終わったのがいたたまれないような気もした。尤も皆、自分のことだけで手一杯で、新入りがどうしていようが、かまうほどの余裕はなかったのだが。
 部屋を出る間際に、男は再び口を開いた。
「昼メシを食ったら、午後は礼儀作法だ。おまえの育ちなら必要ないかもしれんから、まあ休憩がてらな。そんで夕メシも早めに食って、夜はレクに出す」
 レクとは、自由参加の乱交のことである。手が空いていて欲求不満な調教師と、大人数に輪姦される研修が必要な奴隷が集まって、ひたすら乱交をするのだ。その意味は少女にはわからなかったが、次の言葉でなんとなく解った。
「おまえはまだあんまり使ってもらってねえからな。レクでたくさんのちんぽに可愛がってもらえ」
「は、い…」
「さっきのヤツみたいに溜まってるやつらばかりだからな。どんどん精子を搾り取ってやれ」
「はい…」
「たくさんちんぽがいて、味もかたちも匂いも違うからな。楽しいぞ」
 楽しい、のだろうか。いや、きっと楽しいのだろう。まだ3本しか知らない少女であったが、それでも随分違うのはわかったから。
「ここを出る時までに、どのちんぽが誰のなのか、目を瞑って咥えただけでも見分けられるくらいにしてやるからな」
「そんな…こと…」
「できなきゃいけねえんだ。できるようにしてやるから、気張れ」
 これから先の少女の生は、それが出来るようになることで切り開かれるのだから。

 もちろん、気心が知れるというのは、お互い様のことである。調教師も人間であるから、馴れ合いに発展する可能性がないわけではない。けれども、過酷な研修に手心を加えるような調教師がいるはずはなかった。手を抜いた調教をして、奴隷としてのレベルが低いまま出荷することになってしまっては、一番困るのはその可愛がった奴隷自身である。売れ残ったり返品されてしまえば、どうしてやることもできない。だから、気心が知れて情が生まれた奴隷にこそ、厳しい調教を施してやる。手塩にかけて鍛えて、より高価く買ってもらえるように仕上げることこそ、調教師なりの情のあり方であった。

「はい」
 少女は、男の言葉に応えて、少しはっきりと返事をした。




リペア(了)
Thema:官能小説
Janre:アダルト

『研修』 08 リペア(18)

「ふう…っ」
 若い男は射精が落ち着いてからしばらくして、少女のなかからペニスを抜いた。射精したばかりで敏感になったペニスは、精液と愛液で滑りを増した膣の襞に擦られて、若い男に名残の快感を与えた。
 少女は、若い男の肉棒が抜かれて、胸を掴まれていた腕が放されると支えを失い、たまらずに崩れ落ちた。膝を着いて、膝に置いていた手も着いて、四つん這いでかろうじて踏みとどまったが、しばらくは荒い息をついていた。
 若い男には、四つん這いになった少女の尻と、その谷間から零れ出てくる自分の子種がよく見えた。足下に蹲る少女の姿は、若い男の征服欲を充分に満足させたが、そのまま寝転がらせてしまっては仕事にならない。
「おい」
「っつっ…」
 若い男は少女の尻を軽く蹴飛ばして、注意を引き戻した。
「休んでんじゃねえ。おまえの好きな白いのをくれてやったんだ。心を込めてきれいにしろ」
 少女は、体力が奪われた身体を引き摺り、四つん這いで身体の向きを変えて、男に向き直って言った。
「あ、ありがとう、ございました…きれいに、させていただきます…」
 少女は膝立ちになって、精を放って脱力した若い男の陰茎と向かい合った。最初に少女が口に含んだ時よりもやや垂れ下がり気味になっていたが、自分自身の精液と少女の愛液に塗れてぬらぬらと光るその姿には、また別の凄味があった。
 少女は陰茎に手を伸ばそうとしたが、床に着いた手に塵や埃が付いていることに気づいた。軽く手を擦り合わせてみるが、それできれいになるはずもない。躯を使われているうちに、自然と最初の位置から動いてしまっていて、男の椅子の下に置いてあったタオルにも手が届きそうにない。少女は意を決して頭を下げ、見上げるようにして口を開けて、垂れ下がりつつある陰茎を直接咥えた。
 初めて味わう若い男の精液は苦く、空気に触れて既に青臭い匂いがしていた。またそれが少女自身の躯が分泌した液と混ざり、涙が出そうな味がした。同じ精液でも、これまで飲んできた男のものとはだいぶ違っていた。この若い男のもののほうが粘りけがあり、舌に絡みついてくるようだった。口の中に唾を溜めて、そこで濯ぎ洗いをするようにしながら、精液の固まりをひとつひとつ舌で拭い取っていった。
 その途中で、少女は内腿に冷たいものを感じた。胎内に出された精子と愛液が零れ出て、内腿を伝って垂れていた。頭では解っていても、中に出されたことのショックは大きかった。けれども、心のままに泣くことはなかった。そんな自由はなかった。どうせこの床に垂れた精液も、あとで舐めることになるのだろうし。

 お清めが終わり、若い男が満足して立ち去ると、少女はまた四つん這いになって男の元に戻った。男は椅子に座ったまま、少女のことをじっと見下ろしていて、何も言わなかった。その沈黙が、少女は何よりも怖かった。
 怒られる覚悟は出来ていた。若い男の言うことに答えられなかったし、満足に奉仕できたとは自分でも思えなかったからだ。どれほど酷く怒られても、惨い罰を与えられても堪えられるように、少女は心をぎゅっと硬くしていた。男の言葉は常に少女が予想だにしないことばかりで、どれほど覚悟をしても慣れると言うことはなかったが、だからといってへらへら笑って受けることはできなかった。目を逸らしたり瞑ったりするとまた怒られるので、せめて心を閉ざして、男の言葉を待った。しかし男はなかなか口を開かなかった。あまりにもお沙汰がないので、少女は不安になった。心構えを続けるのはそれだけで精神を疲労する。どうぜ怒られるなら早くしてほしかった。何を言われるかわからない恐怖や不安よりは、現実になった痛みや苦しみの方がよほどマシだからだ。少女は、懇願の眼差しで男を見上げた。どんなことでもいいから、何か言って欲しい。少女は今や完璧に、男に依存していた。
 たっぷりと少女に不安を与えた後、男はおもむろに口を開いた。少女の顔を見ようとはせず、視線は遠くを向いたままだった。
「どうだった、あいつのは」
「え…ええと…大きかった、です。それに、硬くて…」
「俺の年寄りちんぽとは比べものにならなかったろ」
「え、い、いいえ…そんな…」
「いいよ、当たり前だ。けど若いのは辛抱が足りねえからな。すぐ出しちまう。だろ」
「は、はい…」
「やつのはどんな味だった?」
「苦かった…です。ちょっと、しょっぱくて」
「そりゃあ、おめえのマン汁じゃねえのか」
「う…は、はい…」
「苦いのと、他にはなんか違ったか」
「…ねばっこくて、べろにからみついて、なかなか飲み込めませんでした…」
「若えから、精子が元気なんだろうな。なあ、今も、おめえのマンコのなかで、あいつの精子くんたちが泳いでるんだよな。けなげにもな」
「はい…」
 少女は、そのことを想像すると陰鬱な気持ちになった。妊娠はしないと、頭で解っていてもだ。
 少女はここに来てからずっと、ピルを服用していた。研修中に調教師の子を孕んだりしたら、商品価値がなくなるからだ。なので、少女の膣内の精子がいくら頑張ろうとも、卵子がお出ましになる可能性は低かったし、そもそも粘液に阻まれ、子宮に入ることも難しかった。そのことは少女にも伝えられていた。ただでさえ過酷な研修の中で、毎回妊娠の恐怖に怯えていては、精神の疲労が限界に達してしまうだろうからだ。それは少女にとって、微かな救いだった。明日をも知れぬ身において、妊娠しないことが何の意味を持つのかは少女自身にも解らなかったが、とにかくほっとした。好きでもない男の子供を宿したくはない。牝と呼ばれるようになっても残る女性の心理であった。ただしそれは根強く、未だに膣内に熱い精子を感じる度に、妊娠の二文字が頭を過ぎることは避けられなかったが。

 少女の葛藤をよそに、若い男は何も頓着せず膣内に射精していった。若い男も、それまで一面識もないこの少女が、妊娠の心配が無いことは知っていたのである。ピンクの首輪をしていたからだ。ピンクの拘束具は、膣内射精が可であるという証であった。大部屋では多くの奴隷が行動をともにするため、拘束具の色で奴隷の状態把握をするようになっていた。髪型や体勢によっては見逃されることもあるため、首輪に加えて、両手両脚の五箇所に装着することが義務づけられていたのだった。
 ピンクの拘束具は膣内射精可、つまり非処女であり、生理中ではなく、挿入まで調教が進んでいて、ピルの服用が確認されているという状態の証だった。数種類ある中でも一番淫卑な色であった。ピンクを着けている奴隷は、担当調教師の許可の範囲内であれば、自由に躯を使っていいことになっていた。これは調教師同士の娯楽のようにも思えるが、研修において欠かせない重要な制度であった。なぜかといえば、調教師一人では精子の量が足りないからである。
 このハウスの奴隷は、性的奉仕を使用目的として買われることが大半なので、男性を射精に導けることは必須技能である。それを身につけさせるためにさまざまな研修を行っている。研修内容は主に実地訓練であり、調教師が体を張って練習台となって試験し指導している。しかし、いくら調教師が百戦錬磨の女誑しであろうとも、一日に射精できる回数は限られる。歳を取れば尚更である。それでは奴隷の訓練にならない。その為、精力が余っている調教師は、足りないところに提供することが望ましいとされていた。
 皆がそれぞれの奴隷に付きっきりなのに、余るなどということがあるのかと思われるだろう。しかし、すべての牝で射精ができるというわけではないのである。このハウスは年若くして奴隷になった者が多く、牝の場合は処女のまま入荷する牝奴隷が大半である。処女は高値で取引されるため、研修において破瓜させてしまうことは厳禁であった。研修中の事故であれ、乱交における誤認であれ、手を出した者は即座に処分された。処女には赤い拘束具が義務づけられていたが、これを血の赤であると囁かれていた。
 だからといって、性交経験もない初心さでは、口や手での仕方を心得ているわけもなく、初めのうちは満足に奉仕させることもできない。もちろんそんな未熟な刺激であっても、その気になれば射精できないわけではない。しかし、巧く出来てもいないのに射精してやっては、訓練にならない。なので、そういう奴隷を担当した調教師は、しばしば欲求不満を抱えて、ピンクの奴隷の躯を使いに来るのだった。
 また、同じ調教師ばかりを相手にしていると、なんとかのひとつ覚えになってしまう。それでいいのならば、そもそもこの少女のように既に男を知っている中古品は、右から左へ転売してしまってもかまわないことになる。そうではなく、これまでの主人とはかけ離れた嗜好や性感を持つ主人をも満足させるだけの技量を身に着けなくてはならなかった。牝だからといって男性客に買われるとは限らない。女性のレズパートナーとして購われることもある。その為にも、老若男女様々な、なるべく多くの調教師と当たって経験を積むことが望ましかった。男が、大部屋での調教に切り替え、若い男にすんなり少女の躯を使わせたのはその為だった。

「あいつも自分の牝がいるのによ、ちゃんと精子をおめえに出してくださったんだよな」
「はい…」
「そのことを、おめえはどう思ってるんだ」
「…ありが…たいです。ほんとうに」
「ホントか」
「は…はい。わたしの…ために、お…相手してくださって、満足してくださって、ありがたいし、うれしかったです」
「そうか」
「はい…。ありがとう、ございました」
 少女は男に頭を下げた。しかし男は意に介さず話を続けた。
「けどよぉ」
「…はい」
「おめえがいただいた精子くんたちは、マンコの中で死んじまったり、おめえの腹の中におさまっちまったりしてるんだよな」
「はい…」
「言ってみりゃ無駄死にだよなあ。おめえじゃなくて、嫁さんにでも出してやりゃあ、もしかするとガキになったかもしれねえのになあ」
「…は、い…」
 少女は一瞬、血の気が引いた。自分が舐め取り、飲み込んだのが紛れもなく子供の素であることを思い出し、自分がその子を殺したかのような気分に囚われたからだ。
「だからな」
 男は、顔色を変えた少女の顔をはじめて見て、目を合わせて言った。
「おめえみたいな牝の躯を使ってくださって、精子を出してくださるってのは、ありがたいことなんだぞ。無駄だとわかってるのに、それでもおめえが良いって言って、くださるんだからな」
「はい…」
「だから、ありがたくいただけ。そんで、感謝の心を忘れずに奉仕に励むんだ。わかるか」
 男は、一言一句噛み締めるようにして、少女に教え諭した。
「はい…。わかりました…」
「よし」
 男は、口の端で笑みを浮かべて、少女の頭を撫でた。その途端、少女の目から涙が滲んだ。
「す…すみません」
 涙が零れて、止まらなかった。胸に温かいものを感じた。
「いい。まあ少し休め」
 涙を必死で拭う少女の頭を、男は撫で続けた。何で泣いているのかわからなかったが、少女は悪い気分ではなかった。男の手を頭に感じながら、少女はしばし泣き続けた。

 男の言うことで、少女が哀しんだり嬉しがったりする謂われは、冷静に考えればまるで無かった。確かに男の側からしてみればそうかもしれないが、少女にとって精液は、男に犯された忌まわしき証拠であり、禍々しい妊娠のおそれの原因であり、しかも不味い汁でしかなかった。それを尊べと言われても、以前の少女ならふざけるなと言ったに違いない。しかし今の少女にとってその言い分は、受け入れるにふさわしい正当性をもっていた。男がそう言ったからである。ずっと黙っていた男が、やっと言ってくれたことだからである。男が頭を撫でてくれたからである。それだけで、今の少女には充分だった。
 そのように少女を納得させることが、先ほどからの男の狙いだった。怒られると身構えていた者を怒っても、意味はない。心を頑なにしていては聴く耳をもたないからだ。そもそも、叱責して萎縮させた後に、過酷な訓練メニューを課すような力業では、こういった心構えを身に着けさせることはできない。ゆっくりと刷り込むように納得させてやらなければならないのである。それを効果的にやるために、男は少女を無視し続けて不安を煽ったのだった。そして少女が男の言葉を渇望している状態になったときに、穏やかに言い諭して虚を突いた。意表を突かれた少女は、素直に男の言葉を受け入れてしまったのである。
 それに加えて、精子が死んでいく様を引き合いに出すことで、少女に罪悪感を植え付け、肝を冷やさせた。そこで、どうすればいいかという方法を具体的に示してやった。少女はまさに、地獄において助かるための蜘蛛の糸を見たような気分になっただろう。冷静さを欠いた少女の心は、それを一縷の望みとして受け入れてしまったのだった。頭を撫でてやったのは余計なサービスだったが、不安と恐怖の中において、その愛撫の有り難みは何倍にもなっただろう。それに感じ入って、少女は泣いてしまったくらいなのだから。
 こうして、躯を使っていただくこと射精していただくこと奉仕させていただくことを有り難く思うようになり、恭しくすべてを受け止める心構えが出来れば、下地ができる。あとは幅広い相手との経験を積ませて、技術を磨かせる。そして奴隷にふさわしい礼儀作法を身に着けさせて、研修は完了するのである。



Thema:官能小説
Janre:アダルト

『研修』 08 リペア(17)

「んっ…あっ…あんっ…あぅ…」
 少女が、生涯三人目の男を胎内に迎え入れていた。
「ん…はあ…はぁ…へえ…いいじゃないすか、シュウさん」
 若い男は少女の中に入ってから、既に煩悩と同じくらいの数の抽送を繰り返していた。
「そうか」
「そうっすよ、からみ、ついて…」
「あふ…ん…あんっ…」
 少女は、腰を打ち付けられる衝撃に、膝を掴む手が外れて崩れ落ちそうになるのを必死で耐えていた。そんなことになったら、どんな罰を与えられるか、考えるのも恐ろしかった。
「まあ、素材はな。でもテクがねえ」
「ええ…そうかな…じゅうぶん…しまる…」
「そりゃ、お前のがでけえだけだろう」
「は、ははっ…まあ、それは…」
 若い男が褒めるのを打ち消すように、男は貶し続けた。実際のところは、男が手塩にかけた調教によって、少女の味はなかなかのものになっていた。男のように刺激に鈍感になっているならまだしも、若い男のような歳では堪らないだろう。しかしまだ先は長い。褒めそやして調子に乗らせるべきではなかった。
「おいおい、だらしねえぞ。そんなに溜まってんのかよ」
「ん…いや…、ゆうべも、囲んだり…やったんですけどねえ…」
「もっと気張れ、調教になりゃしねえ」
「はい…あ、でも…ちょ…いい、っすよ…いきそ…」
 男の言葉に答えつつも、それに応えて堪えることができそうにないほど、若い男には余裕がなかった。それだけ少女の膣内は、男根に快感を与え精を搾り取る仕掛けに満ちていたのだった。そんな若い男の呟きを聞きつけ、少女は思わず嫌と呟いた。若い男はもちろん、避妊具など使ってはくれなかった。
「いきそ…す…」
「…ぃやぁ…」
 それは幸いにも、若い男が腰を打ち付ける音に混じり、男達の耳には届かなかった。たとえ届いたとしても、少女の意志などここでは何の意味も持たなかったが。
「仕方ねえな…。おい」
 男の言葉が、唐突に少女に向けられた。
「そいつが、お前のなかに出したいそうだ。若いから濃いのがどびゅどびゅ出るぞ。貴重な精子を恵んでくださるときには、どうするんだっけか」
 腰から頭の中まで掻き回されていた少女だったが、男の言葉はすぐに耳に入った。
「は…はぃ…あっ…あ、あの…なかに…なかにだし…だして、ください…」
「っん…はぁ…何を?」
 少女の必死の懇願に、若い男は空惚けた。
「…な、なに…」
「なにを…出せって?」
「あ、あの…」
「きこえねーよぉ」
「…せ、せいし…を」
「ニホン語じゃわかんねえ、ドイツ語で言え」
「え…はふ…ドイ…んっ…ご…?」
「そうだ。教えて…もらったろ…」
 若い男は、腰の動きを少しだけ緩めた。余興を交えて長持ちさせることにしたようだ。
「…ざー…めん」
「へへ…。や、俺じつはイタリア人なんだわ…。イタリア語で言ってくんなきゃわかんねえなあ」
「えぇ…。んあっ、…すぺルっ、ま…」
「へえ…よく知ってん…なあ…。でも、なんで牝が、人間様みたいな口きいてンだよ」
「ぇ…ぁうっ…」
「牝には、牝らしい…コトバがあんだろよ…」
「…ぁ…あう…」
 少女には、なんのことかわからなかった。ザーメンやスペルマという言葉ですら、ここに来てから覚えたもので、自分で言うには勇気のいる言葉だった。若い男は、その上、何を言わせたいのだろうか。
「ほら、鳴けよ」
「…んっ…し…」
「ぁあっ、なんだって」
 若い男は、少女の尻を張って、恫喝した。
「し…しろいの…」
「あァ…なんだそりゃあ、白いんなら、てめーで乳出せや」
 男は右手を伸ばして、少女の胸を強く掴んだ。
「ぁん…し、しろくて…ぁ、あついの…」
「へええ、白くって、熱いんか」
「し、しろくて…あつくて…、んあっ…どぴゅって、する…」
「はっ…どぴゅ、かよ…」
 若い男が少女から目を離して顔を上げた。視線の先にいた男は首を横に振った。無理だろうということだ。若い男は目を伏せて了解して、仕方ないのでこのまま最後までいくことにした。
「どぴゅって、何がでるんだ、言ってみろ」
「うぅ…んっ、せ、せいし…」
「ちっ、それしか、知らねえのかよぉ」
 若い男は、胸を掴んでいた手を一度離して、勢いを付けて張った。
「あふっ…す、すみま、せんっ…」
 少女の口からは、痛みのせいもあり、咄嗟に謝罪の言葉が漏れた。
「じゃあ、精子をくださいってずっと言ってろ。ずっとな」
「はっ…あ…せいしを、ください…せいし、を、くだ…さい…っん…」
 男は、それを聴きながら集中して、腰の動きを再び早めた。
「せいしをください…せいしをください…せーしをください…セーシをください…セーシをくダさい…セーシヲクダサイ…セー」
「おっ…し、やるぞっ。くれてやるっ…」
 その瞬間、若い男は少女の一番深くまで肉棒を突き込み、一瞬動きを止めた。それと同時に少女の中では、男の分身が激しく蠕動し、ペニスの先まで迫り上がり詰まり溜まっていた精子を送り出していた。
「ァっ…」
 少女は、少女自身が言い表した白くて熱いものがどぴゅっと飛び出て、腹の中に広がっていくのを感じた。少女の胎内でありながら少女自身のためではなく設えられている器官が、待ち望まれた賓客を迎え入れるために活発に動いているのを感じた。少女の膣や子宮は、ありていに言えば悦んでいた。それは少女にも、得も言われぬ快感として還元された。
 あ…ニンシン…あぁ…きもちいい…セーシ…。



Thema:官能小説
Janre:アダルト

『研修』 08 リペア(16)

 少女は、すこし穏やかな気持ちになって、目を瞑って男の肉棒への奉仕を続けた。一月の間ずっとつきあってきたモノである。見なくても、どんなかたちをしているかは頭に焼き付いていた。人間の感覚器官のなかでも特に繊細な舌と指先をもって、男の敏感な性感を刺激していく。その作業に没頭すると、次第に周りのことが気にならなくなっていった。

 周りに大勢いる中での奉仕は初めてだった。そもそも、ここにこんなにも多くの人間がいたことを初めて知った。こんなにも多くの人間が裸で居るところを見たのも、初めてだった。ここに来てから見るもの聞くもののすべてが、それまでの少女の世界にはなかったものばかりで、いちいち驚くような感性はとうに磨耗したと思っていた。それでも、この部屋に入った瞬間には、思考が停止した。
 まるで地獄だった。幼い頃に絵本を見て思い巡らし怯えた地獄さながらの光景が、部屋の中には広がっていた。鉄釜も火の山もないのに、熱気に満ちていた。売られてきた身では当たり前のことだが、六文の銭すら持ち合わせることはなかったのだろう、中にいる者たちはみな裸だった。晒け出された様々な肌の色が無機質な部屋の壁を彩り、肉林かくやあらんという眺めをつくりだしていた。角が無い鬼たちが、鞭を振るって怒号を飛ばし、年若い亡者たちが、賽の河原の石積みのように終わりのない苦悶に喘いでいた。
 亡者といったが、それはある意味で正しくない。その顔は苦痛とともに快楽にも歪み、青白く沈むことなく真っ赤に染まっていた。鮮血が吹き出るかわりに、淫卑な匂いの汗が噴き出ていた。地獄にいるままに極楽に逝った証の潮と精が飛び散っていた。それらが混じり合った重く濁った淫卑な匂いは、死人に醸せるものではない。ここにいる者たちはみな生者であったが、同時に亡者でもあった。何かを亡くし、この世のものとは思えぬ凄惨な地獄に送り込まれた亡者の群れであった。
 自分が落ちたのは畜生道だと思っていたのに、更に地獄道に引きずり出されたのか。通っていた女子校で刷り込まれた仏教の知識が、少女の頭にそんな思いをよぎらせた。この世のものとは思えない凄惨な光景に足が竦んでしまったが、長く立ち止まっていることは許されなかった。少女の側にもいる鬼が、鎖を牽いて地獄へと誘っていたからだった。そうして少女も、亡者の列に並び、鬼の慰みに供されることとなった。

「シュウさんを満足させるのは大変だ」
 若い男は、しゃがみ込んで少女の躯を撫で回しながら言った。軽口を叩きながらも、その指は繊細に少女の肌を這い回った。
「馬鹿たれ。俺なんか易しいだろ。要は巧くなればいいんだからよ」
 男は、少女の顔の下に手を入れて、その小さな頬を親指と人差し指で掴んだ。もっと頬を窄めろということである。言葉では言われなくともそれがわかって、少女はその通りにやり方を変えた。
「どんな趣味のに買われるのかわかんねえんだからな。俺の言うことくらいできなきゃ駄目だろ」
 男は少女の頭を、褒めるように撫でた。口ではやはり何も言わなかったが。
「ホント…優しいっすね」
 若い男はそう言って、目をすがめて少女を眺めた。その瞳もまた、いみじくも優しさを湛えていた。

「ところで、こっちの方はどうすか」
 若い男の手はまた少女の尻に降りて、尻たぶの合間に人差し指を割り入れていた。女座りをしている少女の尻は閉ざされていて、その指の先はヴァギナまで辿り着かずにアナルに触るだけに留まった。しかし少女にはそれで充分だった。思わぬ刺激を与えられて思わず奉仕を止めてしまうと、また男に軽く頭を叩かれた。
「どっちだ。マンコか、ケツか」
「んー、とりあえずマンコのほう、どうすか」
 そういいながら若い男の人差し指の先は、狭い尻肉の合間でも動き、菊の花びらをノックしていた。そうしているとヴァギナまでの道が開けるとでもいった動きに、少女はむず痒さを感じた。
「悪くはねえ。試してみるか」
「えっ、いいんすか」
「ああ。どうせはじめからそのつもりだったろ」
 男は、若い男の狙いを見透かしたぞと顎をしゃくった。
「え、へへへ。見慣れないピンクちゃんがいたら、そりゃあね」
 若い男は誤魔化すように空笑いをした。
「つうかお前、自分の担当の牝はどうしたんだ」
「あっちです。エックスの2番目」
 若い男が、人差し指で部屋の片隅を指した。その指の先から十数メートル離れた壁に、両手両脚をX字に開いて磔られた少女がいた。その少女もまた全裸であり、両手足首の拘束具と首輪だけを身に着けていた。違うところといえば、磔の少女のそれはピンクではなく真っ赤だった。それと遜色ないほどに、顔から全身まで真っ赤にして身悶えしていた。
「まだ処女で二日目なんで、とりあえずローター付けて放置っす。何度かイかせて敏感にしといてからイジめてやろうかなと」
「なんだ、手ぇ出せなくて溜まってんのかよ」
「ま、そうっす。ほら、金玉こーんな」
 若い男が、自分のペニスを臍に付くように手で反らせた。よく見えるようになった睾丸は大きく、重そうに垂れ下がっていた。
「よせやぁ、てめえの金玉なんざ見たかねえ。早く牝を躾けて抜いてもらえ」
 男は手を振って、いかにも嫌そうにしてやった。
「はい。で、まあ今日のとこは…いいすか」
 若い男が物欲しげな視線を向けると、男はにやりと口の端で笑って言った。
「じゃあまあ、遊んでいけや」
「あざっす」
「まあ三十分位したら見に行ってやれ。ガキにあんまり急にやりすぎると、ひきつけ起こしたりするからな」
「はい、そうっすね」
 若い男が軽く請け合うと、男は少女の頭を二度叩いて、奉仕を止めさせた。少女は頭を上げて、男の肉棒から口を離した。男を見上げる少女の顔には、聞こえてきた話のために不安の色が漂っていた。
「聞こえてたな。そいつがおまえのマンコを使ってみたいそうだ。ちんぽを入れていただく時には、どうするんだっけかな」
 少女は、薄々覚悟していたことが現実になったことで動悸を激しくしながら、胸の前で両手を軽く握って、おそるおそる言った。
「ご…あいさつをして、おきよめを…」
「あ、挨拶とかいいからいいから。とりあえずしゃぶってよ」
 若い男が、少女の顔の側まで腰を突き出して、軽い調子で言った。少女は、躾けられた作法に背いていいものか困惑し、もう一度男の方を向いて確認を求めた。その答えは短かった。
「早くしろ」
「は…はい」
 少女は、膝立ちになって摺り足で身体の向きを変えて、若い男に向き直った。その目の前に、半立ちになった肉棒があった。
「しつれい、します…」
 少女は、若い男の肉棒を見てギョッとした。フェラチオをする前で半立ちのはずのペニスが、既に勃起が済んだかのように高々と屹立していたからだった。若さ故である。もちろん、触ってみればまだ少し柔らかく、半立ちの状態であるのはすぐにわかることだったが、少女は圧倒された。若いペニスを見るのは、この時が初めてだった。これまでに少女の躯を通ったふたりの男は、どちらも年配だったからだ。目を見開いて止まってしまった少女に若い男が軽口を叩く。
「おいおい、見惚れてくれんのはいいけど、まだこんなもんじゃねえからさ」
「は、はい」
 少女は急いで、胸の前で握っていた手をほどいて、若い男の竿に手を絡めた。握ると指が軽く沈み、曲げられそうなくらい柔らかかった。若い男の言葉は見栄や意地ではなく、まだまだ硬くなりそうだった。少女は初めてのペニス、生涯三本目の肉棒に手を滑らせた。初めのうちは、この一月つきあってきた男の肉棒との違いに驚き、珍しいものを確かめるような手つきだったが、次第にこの肉棒だけを見るようになった。少女の細く長い指がゆっくりと、肉棒を愛おしむように動いていく。雁首の淵を指でなぞったかと思えば、尿道や血管を辿るように下に降りる。先ほど話題になった精がたっぷり詰まった睾丸を、掌中の玉のように捧げ持ち、手のひらで軽く握って愛撫する。もう一方の手は、いいこいいこをするように亀頭を軽く撫ぜて、鈴口に滲んでいた汁を汲み出して広げるようにしていた。その頃には少女の胸の動悸は、見知らぬペニスへの恐怖によるものではなくなっていた。まるで想い人に出会った乙女のような緊張と、このペニスをどう可愛がろうかというわくわくした気持ちで、少女の胸は高鳴っていたのだった。
 思わず飲み込んでしまいたくなる生唾を溜めて、口腔内の準備をしてから、少女は舌を小さく出して、裏筋を軽く舐め上げた。仁王立ちになっていた若い男が、その刺激に少し身じろぎをした。少女はそれを何回か繰り返してから、唇でもって肉棒を甘噛みし、唇の隙間から舌を出して小刻みに舐めた。少女の舌先や唇は鋭敏なセンサーとなって、若い男のペニスの血流が激しくなるのを感じ取った。
「ん…なかなか…」
 若い男が少女の頭に手をやって、髪を掻き回すように撫でた。

 男は、簡単に褒めるなと言おうとしたが、思い直して口をつぐんだ。少女にとって初めての、他の男への奉仕である。気分良くやっているようなら、余計なことを言って緊張させないようにすることを優先にした。若い男の方にあとで言っておけばいいことだから。
 それよりも別のことを注意するのを忘れまいと、男は考えていた。今、若い男がせっついたので、少女は挨拶を省略して奉仕に就いた。形式や作法よりもその場の言いつけを優先するのは当たり前であるとして、問題は手であった。少女は直前まで、男のペニスを舐めしゃぶって奉仕していた。その手には当然、少女の唾液や男の体液が付着したままだった。それを少女は失念していたのではないだろうか。
 もちろん、性行為の最中、佳境に入ったときに、いちいち手を清めることはない。複数の相手をする時であっても、相手がかわるたびにいちいちそんなことをしていては興醒めである。しかし今のような時に、その発想すらないのは問題である。自分以外の男の体液が付着することを嫌がるような男は、そもそも乱交などしないだろうし、若い男も自分も気にはならないが、奉仕する牝はそれを気に掛けていなくてはならない。主人との性行為を行うのだから、衛生観念は徹底して刷り込まねばならないのだ。
 尤も、排泄物に塗れたり、野外で組み伏せたりする趣向もある。潔癖であることを貫くなら、体液が飛び散り雑菌が繁殖するこの部屋の状態すら好ましくはないだろう。そこまで気にすることではない。けれども、全く気に掛けないでいいかというと、それはまたよろしくない。感染症を招く危険性もあるが、奉仕においても問題となる。スカトロジーや泥靴を舐めさせるような趣向は、それが禁忌に触れる行為であるという意識があるから面白みが生まれるのである。はじめから汚れることを気にせず、汚いと捉えぬのならば、やらせる意味がない。犬猫に尻穴を舐めるなど汚いと説くのと同じである。
 男がその場で注意をしなかったのは、男への奉仕を止めたときに、手を胸の前で組んでいたからである。手術中の外科医と同じように余計なものを触らずにいろと何度も注意したのは、かろうじて刷り込まれたようだったからだ。あの時、挨拶をしていれば、少女は手を清めることを忘れなかったに違いない。三つ指を床に着けば、どうしても細かい埃や塵は付いてしまって、気になったはずである。ならば、少女が失念したのは、急かされて一定の流れを崩されたからだと勘弁してやることはできるだろうか。それはできない。予想外のことや急な出来事、常にないことはどうしたって起こるものである。けれども、それに動じていては奴隷は務まらない。主人からどのような理不尽な命令を受けたとしても、自分の分と為すべきことを忘れずに、奉仕ができるようにならなくてはならないからである。
 男は、後日同じような状況を作って、その時に少女に問いただすか、叱責することに決めた。考えがまとまって、眼前の光景に意識を戻すと、少女は立って上体を前に倒していた。、若い男は準備が整ったのか、碁盤攻めをするようだ。いや、ちょうどいい高さのものがなく、自分の膝を掴ませていたから、単に立ちバックと言った方が的確だろう。



Thema:官能小説
Janre:アダルト

『研修』 08 リペア(15)

 男に犯され続けて三日が過ぎ、はじめて、明日は休みだと少女は告げられた。昏睡状態で休養が許された日はあったが、この生活に休みなどというものがあるとは思わなかったので、少女はすぐには信じられなかった。しかし、眠って目覚めても、本当に男は現れなかった。時計も窓もない部屋の中では夜も昼もなく、明日というのがいつからいつまでなのかは解らないままだったが、とにかく一日分、男は姿を見せなかった。
 休みといっても、何もない部屋の中である。テレビやゲームがあるはずもなく、読む雑誌や書き物をする文房具が差し入れられることもなかった。玩具というならいわゆる大人のオモチャはたくさん部屋の中に置かれていたが、休みだというのにわざわざそれで遊ぶこともなかった。
 することもないので、風呂に入った。久しぶりにバスタブに湯を張って、肩までゆっくりと浸かった。バスプレイをするためにやや広めのバスタブだったので、充分に手足を伸ばすことが出来た。熱いお湯が縄目や鞭の痕にしみて少し痛かったが、じっとしていたらじきに慣れた。久しぶりに湯船に浸かることができて、少女は心の底からほっとした。身体は毎日、色々なもので汚れるたびに洗っていたが、たいていはシャワーで洗われるだけだったので。湯船の中で湯を弄びながら、久しぶりに少女は自分の手足や肌を気にかけた。以前は、スキンケアに気を遣い、日焼けをしたシミができた化粧水が乳液がと大騒ぎをしていたものだったが、今の方が肌の状態がいいような気がした。太陽を浴びることも外気に触れることもないからだろうか。毎日たっぷりと汗をかいているからであろうか。まして汗の理由はセックスである。性感を刺激されて絶頂を極めて、女性ホルモンが刺激されるなかで噴き出た汗で身体を洗っているようなものなので、自然と肌の張りが保たれているのかもしれない。
 風呂から上がると昼食が届いていた。食事はきちんと三食食べた。いつもは男が運んでくるのだが、その日はいつの間にか二重扉の内側に置かれていて、いい匂いが漂ってきたのでわかった。誰が運んできたのかはわからなかった。久しぶりにひとりでゆっくりと食べることが出来たが、なんとなく味気ない気がした。食べ終わって食器を元の位置に戻して、そのままベッドに横になった。することがないので寝てしまおうと思うような性分ではなかったが、身体がそれを要求したのだろう。天井を見上げてぼおっとしていたら、いつの間にか眠ってしまった。夕食の匂いで目が覚めたので、食べて、また寝た。本当に休むだけになってしまったことが勿体ないような気もしたが、かといって何があるわけでもなかった。眠りに落ちる寸前、本当に一日姿を見せなかった男のことを考えた。男の、顔よりも長く見ている男根を思い出すと、手が自然に股間に下がった。一昼夜の休養を与えられたクリトリスを目覚めさせ、淫らに心地よい痺れを産み出させるように撫でさすりながら、少女はいつの間にか眠りについた。

 次に目が覚めた時には、一日が過ぎていたのだろう。すっきりと目が覚め、少ししてお腹が空いた頃に、男が食事を持ってやって来た。一昨日までのように、ふたりで床に座ってそれを食べた。特に話すわけでもなかったが、昨日ひとりで食べた食事よりも美味しいような気がした。
 食べ終わると、風呂に入れられて、身体を丁寧に洗われた。珍しいことに首輪も外された。今までも首を洗っていなかったわけではなかったけれど、緩めて肩口に落として、その間に首を洗うような次第で、身体から離すことは許されていなかったのである。首輪は奴隷の躯の一部だからというのが男の弁であった。それが外されたのが少女には意外で、洗われるに身を任せている間、何が始まるかと不安が頭をもたげた。
 全身を隅々まで洗い上げられると、香水を付けられた。それは今まで少女が使ったことのあるものに比べたら安物のようで、きつく妖しげな香りがした。
 次に、新しい首輪を渡された。少女はそれを見て無意識に首に手をやり、軽く撫でた。首輪がないことに違和感を覚えていたのだろう。新しい首輪を付けた後には、それを一撫でして小さく安堵の息を吐いていた。少女は否定するかもしれないが。
 この一月の間身に着けていたものは黒だったが、新しいそれはピンクだった。同じ色の腕輪と脚輪もあり、両手両脚と首とがピンクのベルトに彩られたことになる。それぞれの輪には金具が付いていて、手と手、脚と脚を細い鎖で繋げられ、首輪にはリードが取り付けられた。すべてを着け終わると、四つん這いになるように命じられた。
 リードが軽く引かれ、少女は小さく呻いてしまった。それを男に聞き咎められ、どうせなら犬のように鳴けと言われたので、おそるおそるわんと言ってみせた。わんだけでなくくぅんとかきゃんと言わされ、お手やお座りやちんちんなどを命じられた。今までにも同じようなポーズはさんざんさせられてきたが、完璧な犬扱いをされるのには、また別の羞恥が沸き起こった。おしっこや交尾と言われた瞬間はさすがに躊躇ってしまって、頭を叩かれた。仕方なく左脚を高らかと上げたり、鎖に繋がれた両脚を目一杯開いて尻を高く突き上げたりした。
 男はそんな少女を冷笑して一瞥し、リードを引っ張って歩き出した。少女は首を引き出されないようにペースを掴み、四つん這いで歩いた。男は部屋の扉を開けて、さらにもうひとつの扉も開けた。少女は、その扉が開いたのを見るのは初めてだった。外の廊下の冷たい空気が流れ込んできて、少女は身体をぶるっと震わせ、足を止めた。寒さだけではなくて、未知の世界への恐れも、少女の足を止めたことは間違いない。しかし男は少女のそんな感傷を許さず、強くリードを引っ張りながら扉の外へ歩き出した。少女は慌てて這い出して扉をくぐった。男と二人だけの小さな世界から、少女は連れ出された。
 今日の朝のことだった。



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